敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です

 社長は忘れているだろうが、佐貫部長もあのリポートを読んでうちの課に入れたのだ。

 貿易を専門に学んでいた雪はうちの課にぴったりだった。

 うちは商社を担当していたからだ。

 先日リポートが記事に使えると思って彼女に一旦返した。

 その前に見直したのだが、彼女は逸材だった。

 今現在色々な学生を見ながら、実際に教鞭をとっているからこそ、よくわかるのだ。

「今回の記事はその集大成。佐山の成長のたまものですよ」

 本当に驚くほどいい記事だった。

 経済評論家も皆褒めている。

 雪の実力はまだまだこんなものじゃない。

 エントリーから年度末に最優秀賞が選ばれる。

 『財閥の明日』は最優秀賞だった。

 俺はその前にも二度ほどもらっている。

 俺の一番弟子が花開く日も近い。

「ひょっとしたら、いけるかもしれないな……」

 社長は鼻歌を唄っている。

 しかし俺は鼻歌を唄う気分じゃなかった。

 記事が取り上げられることは、いいことばかりではない。

 最近、経済ジャーナルの佐藤記者が雪の過去の記事を引き合いに出して批判するようになった。