敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です


 社長から呼ばれた。

「透、佐山さんの貿易に関する記事、今年度のジャーナリスト経済部門賞にエントリーされた」

 予想通りだった。

「なんだ、驚かないのか?部門賞のエントリーは年間五本しかない」

「まあ、当然です」

「当然ってお前……彼女、まだ課長になって一年目だぞ」

「敢えてサブリーダーのまま修行していたんです」

 社長は呆れたように言う。

「それは大分言い方に間違いがあるな」

「なんでしょう?」

「彼女の昇格を阻んでいたのは上司の透だろう。最低な上司だ」

 確かにそういう言い方が正しいだろうな。

 本来、二年以上前には課長職になっていておかしくない人材だった。

 側に置きたいがために、そのままだったのだ。

 周囲も俺に気を遣っていたのは間違いない。

「最低なのは自覚があります。彼女の実力は入社前から折り紙付きでしたからね」

「辛口の上司が随分と甘くなったものだ」

「そうではありません。彼女の貿易に関する大学のレポートを見てバイトさせたんです」

「そう言えばそんな話もあったな」