敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です

 実は先月の経済ジャーナルで、佐藤記者が貿易赤字について書いた記事が掲載されていたのだ。

 佐藤記者は基本的にいい方を膨らませて書く。

『功』つまり、メリットの部分だ。

 輸出企業をいくつか例に挙げ、収益の増加が見込まれることを全面的に押し出して書いていた。

 しかし、雪の書いた記事はデメリットがメリットを上回る可能性について厳しく言及していた。

 輸出企業が製品の製造に必要な原材料を輸入に頼っていれば、円安で原材料費が高騰する。

 原価が高騰すれば利益率を圧迫する可能性も高い。

 収益の増加予測は決して確実でないのだ。

「攻めすぎましたか?データはきっちり取りましたので予測にも自信があります」

「それはわかっている。間違ってはいない」

 楽観的観測は常に控え、今までのデータや現在の社会情勢を踏まえ、今後予測できる範囲のことを厳しく追及する。

 それこそが高原チーフのやり方であり、弟子である雪の目指すところでもある。

「それはそうだが、今後によっては彼にダメージを与える可能性もある。雪の記事はそれくらい説得力がある」

「チーフ……」