敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です

 え?今よかったって言った?

「今、私のこと褒めました?」

 彼はうなずいた。

「卒業試験に合格しただけのことはある」

「嬉しいっ!」

「ああ、俺も弟子の成長は何より嬉しいよ」

 彼は雪を見たことのないような優しい目で見ていた。

 商社の担当となってから貿易について勉強しなおした。

 貿易は学生時代から追いかけていたテーマだ。

 レポートを履歴書代わりに出したら、チーフの課に配属された。

 商社を扱っていて、貿易の記事も書くからだとあの頃教えられた。チーフにずっと鍛えられてきた。

 知識の蓄積、裏づけされたデータ、チーフから学んだことを全て注いで作った渾身の記事だった。

 評価されたのは本当に嬉しかった。

 それがあさって掲載予定の『日本貿易の功罪』という記事だ。

「雪」

「はい」

「先月号の経済ジャーナルに目を通しているか?」

「もちろんです」

「貿易赤字と輸出企業の件、一部相反している。わかっているんだろうな?」

「佐藤記者の記事ですね」

「まあ、彼は甘味処だからな。あれが彼の持ち味で記事の特徴だ」

 言われるかもしれないと思っていた。