敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です


「あちらにも佐藤君という有名記者がいるからね」

 ライバル出版社に所属する佐藤記者は最近どこぞの賞を獲ったらしい。

 ネット系の非上場会社などを中心に取材、うちの会社が出遅れている分野を狙っているのだ。

「そうですか。別に構いませんよ。ただ、来年の受賞はうちの佐山かもしれませんけどね」

「チーフ⁈」

 雪は驚いて隣の高原を見た。高原は茶をすすりながら涼しい顔で言う。

 目の前の役員は固まっている。

「ジャーナルの佐藤さんの記事は僕も目を通してます。狙っている取材先を褒めまくる手法らしいですよ」

「高原君」

「僕が一線を引くという噂が流れているので、僕の担当していた会社ばかり褒めてる」

「おいおい、高原君……」

「ジャーナリストは甘味処じゃないんです。苦い部分を指摘するのも、そちらの会社のことを思えばこそです」

「確かにそうだね。君のお陰で助かったこともひとつやふたつじゃない。記事にしないでくれたこともあったね」

「御社はあの頃まだ非上場だった。私も御社と一緒に成長していけたらと思っていましたからね」