敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です

「ええ、おかげさまで大分よくなりました」

「いいか、しばらくは気をつけたほうがいい」

「はい」

「それでうちに来る話は受けてもらえるんだろうね?」

「非常勤講師ですか?不定期になりますがいいんでしょうか」

 大学で何回か特別講義をしてほしいと頼まれていた。

「構わない。学長も了承している。学生にはいい刺激になるだろう」

「そうでしょうか」

「いずれこっちへ軸足を移してもらいたいくらいだよ」

「それはまだまだ先になるでしょう」

 ひとりになるこれからこそやりたいことが出来る。

 長年温めていた夢を実現するチャンスでもある。

「わかった。来月から君を受け入れる準備をさせてもらう」

「よろしくお願いします」

「ああそうだ。氷室君にもよろしく伝えてくれ」

「はい、わかりました」

「君らのお陰で事件が表沙汰にならず、晴海商事は首の皮一枚繋がった」

 氷室が今回の晴海の不祥事を表沙汰にしなかった。

 両輪のひとつである氷室商事の価値も下がるとわかっていたからだ。

 だが、ライバル社だから蹴落とすという判断もできなくなかったともいえる。