敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です

「え?」

「俺が口を出すとお前らしさがなくなるということに最近気づいてね」

「チーフ」

「俺の怪我も治ったら、いよいよ佐山リーダーの誕生だな」

 雪はずっと聞きたかったことを口にした。

 自分で想像していたよりずっと低い声がでた。

「……それでチーフはどうなるんですか?」

 高原は雪の声を聞いて、わざと明るく答えた。

「この間言った通りだ。もうチームを持つことはないだろう」

「どうして……!」

「そんな顔するな。まだ正式にどうなるかは決まってない」

 雪はその時が来たんだとわかった。

 チーム制はそれぞれのチームには任された部門があり、やりたいテーマを取材することはどうしたってできない。

 決まった範囲の中で自分らしさをだしていくしかないのだ。

 前に常務と話をしたとき、チーフは長年昇進を断っていると聞いた。

 記者として沢山の受賞歴があり、政府要人や大企業の幹部にこんなに顔が利く人はうちの会社にチーフだけだ。

 部長とそう違わない年齢なのに、なぜか部長の下でずっとチームリーダーを続けている。