敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です

「嬉しそうだな、佐山」

「それはそうです。林さん、三年目になるのにまだ下がいなくてずっと下の仕事させていて申し訳なかったんです」

「よかったな、佐山」

「はい」

「今回ばかりはさすがの常務も認めてくれた。佐山の言う通り林の下に入れるつもりだ。林が佐山の仕事をできるようにするためだ」

「先々を考えても今入れて頂くのがベストだと思います」

「高原も、災難を利用してそっちも頑張れよ。邪魔しないでいてやるからな」

 部長はにやりと笑っていなくなった。

「部長ったら何を言ってるんでしょう。災難を利用とかおかしいでしょ」

 部長を玄関まで送って戻ってきた雪は、部長が元は座っていた椅子に座った。

 隣には高原が座っている。

「相変わらずお前は自分の周囲の洞察力が低い。記者としてそういうのは致命的だぞ」

「どういう意味ですか?」

「まあ、いい……とにかく今日はありがとう。警備員もいるから大丈夫だとは思うが気をつけて帰れよ。明日から頼むな」

「はい。わかりました。じゃあ、無理しないで下さいね」

「わかった、わかった……お疲れさん」

 松葉杖をついて書斎へ戻る高原の後ろを、雪は取材書類を持ってついて行く。

 机の前に座ると、あっという間にタイピングしだした。彼は集中すると何も聞こえなくなる。

 雪はそっと部屋を出た。警備員がついてきた。

 棟違いなのですぐに自分のマンションについた。