――通夜の日の深夜二時。鏡に向かって死者のことを念じると、鏡の中から死者が五分間だけ現れる。
とある掲示板に書かれている嘘みたいな都市伝説に、私はすがるしかなかった。
掲示板には、まことしやかにいくつもの体験談が並んでいた。深夜に鏡をのぞくと何かが起こるという都市伝説はいくつもあったけど、私が探しているのは、霊に会えるというもの。
私には、会いたい人、最後にどうしても会わなくちゃいけない人がいる。私を、暴走したトラックからかばって亡くなった、彼氏のユウに。
深夜二時直前、私はあふれる涙をぬぐった。深呼吸し、祈るように鏡を見つめる。お願い、ユウに会わせて。
どのぐらい念じ続けていたのだろうか。
突然、声が聞こえた。
「ああっ」
私じゃない、ユウの声だ。
「ほんとにユウ?」
「……それはこっちのセリフ……ほんとにミサ?」
目の前で、ユウが泣きそうになりながら私を見つめていた。
「ユウ、ごめん。私をかばったせいで、死んじゃったんだよね。本当にごめんなさい」
たった五分の再会。急いで、伝えたいことを言わなきゃ。
ユウに謝っている最中、楽しかった毎日を思い出す。中学校の帰りにアイスを食べたり、勉強したり……思い出すと、自然と涙があふれた。
でも、ユウは驚くべきことを口にした。
「ちがう。俺は生きてる。死んだのは……ミサだ。俺はミサを救えなくて、謝りたくて鏡に念じたんだ……」
嘘……。
「私が……霊?」
「うん、本当にごめん、俺だけ生きてごめん」
よくよく周囲を見ると、ここはユウの部屋だ。
そっか。霊になって呼び出されたのは、私だったんだ。
「もう五分……」
もう行かなきゃいけないのかな。
嫌だ、一人は嫌だな。
「ミサ、ごめん。ずっと一緒にいたかった」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが弾けた。
「それ、ほんと?」
……私が霊なら、話は別。ユウにはずっと一緒にいてほしい。私はユウの手首を、渾身の力で掴んだ。
「ミサ? 何を」
「ユウ、ちゃんと掲示板見た? 深夜二時の鏡には別の都市伝説もあったよ。『鏡をのぞいたら死者に引きずり込まれる』とか」
私を振り解こうとする彼を、離さない。
「さっき、ずっと一緒にいたいって言ったよね?」
パリン。鏡の割れる音がした。
深夜二時五分。部屋には、割れた鏡の破片だけが、静かに散らばっていた。
とある掲示板に書かれている嘘みたいな都市伝説に、私はすがるしかなかった。
掲示板には、まことしやかにいくつもの体験談が並んでいた。深夜に鏡をのぞくと何かが起こるという都市伝説はいくつもあったけど、私が探しているのは、霊に会えるというもの。
私には、会いたい人、最後にどうしても会わなくちゃいけない人がいる。私を、暴走したトラックからかばって亡くなった、彼氏のユウに。
深夜二時直前、私はあふれる涙をぬぐった。深呼吸し、祈るように鏡を見つめる。お願い、ユウに会わせて。
どのぐらい念じ続けていたのだろうか。
突然、声が聞こえた。
「ああっ」
私じゃない、ユウの声だ。
「ほんとにユウ?」
「……それはこっちのセリフ……ほんとにミサ?」
目の前で、ユウが泣きそうになりながら私を見つめていた。
「ユウ、ごめん。私をかばったせいで、死んじゃったんだよね。本当にごめんなさい」
たった五分の再会。急いで、伝えたいことを言わなきゃ。
ユウに謝っている最中、楽しかった毎日を思い出す。中学校の帰りにアイスを食べたり、勉強したり……思い出すと、自然と涙があふれた。
でも、ユウは驚くべきことを口にした。
「ちがう。俺は生きてる。死んだのは……ミサだ。俺はミサを救えなくて、謝りたくて鏡に念じたんだ……」
嘘……。
「私が……霊?」
「うん、本当にごめん、俺だけ生きてごめん」
よくよく周囲を見ると、ここはユウの部屋だ。
そっか。霊になって呼び出されたのは、私だったんだ。
「もう五分……」
もう行かなきゃいけないのかな。
嫌だ、一人は嫌だな。
「ミサ、ごめん。ずっと一緒にいたかった」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが弾けた。
「それ、ほんと?」
……私が霊なら、話は別。ユウにはずっと一緒にいてほしい。私はユウの手首を、渾身の力で掴んだ。
「ミサ? 何を」
「ユウ、ちゃんと掲示板見た? 深夜二時の鏡には別の都市伝説もあったよ。『鏡をのぞいたら死者に引きずり込まれる』とか」
私を振り解こうとする彼を、離さない。
「さっき、ずっと一緒にいたいって言ったよね?」
パリン。鏡の割れる音がした。
深夜二時五分。部屋には、割れた鏡の破片だけが、静かに散らばっていた。


