Time for a change

部活が終わりかけの夕暮れ、カイト、ミナ、ナツキ、主人公の4人は空き教室に集められていた。

「なんか俺たち、やらかした?」

カイトが椅子を軋ませる。

「いや、マジで何もしてないって!ねぇ、皆?」

ナツキは首を振るが、不安げに辺りを見回す。
ミナは小さく「……ほんとになんも……」と呟いた。

そのとき、教室のドアが静かに開く。
落ち着いた足音と共に、先生と一緒に一人の年配の女性――おばあちゃんが現れた。

「こんにちは」
少し低く、優しい声。

「……こんにちは?」

全員、戸惑った顔で立ち上がる。
「すみません、ここ今使ってるんですけど――」と主人公が言いかけると、
おばあちゃんはにっこりとほほ笑んで首を振った。

「あぁ、あなたたちに用があって来たのよ」

思わず4人は顔を見合わせ、困惑したまま座り直す。

おばあちゃんはゆっくりみんなを見渡し、静かに問いかけた。

「木箱を拾ったのは、あなたたちで間違いないかしら?」

カイトが無言で頷き、ミナとナツキもそれに続く。

「その木箱について、あなたたちは何か知っている?」

4人は口々に
「…噂では、ヤバい箱…らしいです。」
「絶対触っちゃいけない、とか…?」
「選ばれた人が、消えるとか…」と、それぞれ断片的な話しか返せなかった。
おばあちゃんは、そっと瞳を落とし、昔語りの口調で語り始める。

「それはね、“選ばれた証”なのよ。」

「……選ばれた?」
「証?」
「そう。――この街にはね、ずっと昔から人知れず“何か”がいるの。
その“何か”を封じるために、百年に一度生け贄が必要だった。
もし生け贄を出さなければ、街には災いが降りかかる。」

4人は声もなく、おばあちゃんの言葉に吸い寄せられていく。
「…それって、本当に……」とナツキが顔をひきつらせる。
おばあちゃんはふと、遠いどこかを見るような目をした。

「私もね、選ばれたことがあったのよ。」
静寂が訪れる。

「……私以外、みんな死んでしまったわ。」

ミナの手が震え、カイトの顔は青ざめる。
私の鼓動だけがやけに大きく響く。
絶望が教室を満たす。
だが、おばあちゃんはゆっくりほほ笑み、

「でも、見て。私はいるでしょう? 生きているのよ。
必ず“生き残る方法”はある。」

その声には、小さくも確かな、光があった。
一瞬の安堵が流れる。だが、

「けど……百年に一度のはずなのに、どうして今私たちが?」

誰ともなくつぶやくと、場にはふたたび緊張が走る。
「何か……イレギュラーが起きてしまったのかもしれないわね」

おばあちゃんの声は、不安と謎と、そして希望を含んでいた。

「でもおばあちゃんみたいに、倒せば…!」

おばあちゃんは静かに首を振った。

「私のときほど、今回は上手くいかないと思うよ。…一度倒されたからこそ、“あのもの”も、きっと対策をしているはずだもの。」

部屋の空気が重くなった。

「じゃあどうするの…?」

カイトがうつむいてつぶやくと、私が口を開く。
「他にも手がかりを探そうよ。何か…どこかに。」

それで四人は町でいちばん古い図書館へ向かった。
カビ臭い本の山の中、ミナが資料の束をめくっていると、ふと古びた一冊に目が止まった。

「見て、これ――」

“木箱の管理は、代々選ばれた家系が担い、御霊を納める儀式を…“
ナツキが呟く。

「つまり、生け贄の儀式と木箱を守りながら代々続いてきた家があるってこと…?」

それがこの街を長く支えてきた一族の存在だった。

彼らの家は、古い町外れにあった。
訪ねると、思いのほか穏やかで親切な家族たちが4人を迎えてくれた。

「どうぞお入りなさい、遠いところを。木箱の噂を聞いていらしたんですね。」

「なんだ、もっと怖い人達かと思った~」

ナツキがホッとする。
ふんわりとした香りのお茶。綺麗な客間。
「失礼のないようにしろよ」とカイトが小声で釘をさす。
「どうぞごゆっくり」 熟練の女性が微笑む。
安堵を浮かべてお茶を口にした数分後。
ミナが少し焦点の合わない目をして呟いた。

「なんか…へん、かも…」

そのまま四人は、ゆっくりゆっくり、深い眠りへ落ちていった。
目が覚めると、息苦しい闇の中だった。
分厚いコンクリ壁、錆びた鉄格子。
どこからか水滴の音だけが響く。

「なにこれ…? どういうこと…!?」

ナツキが声を震わせる。
カイトが扉をガンガン叩く。

「出せ!ここから出せ!」

その時、外から静かな男の声。

「これは、とても栄誉なことなんだ。選ばれた者に、逃げるなどという選択肢はない。」
「ふざけてる…!」

主人公が唇を噛む。

「生け贄としての役割を、ありがたく受けなさい。」
誰にも見つからない地下に閉じ込められた。
絶望。静かな時間。