I won't forget

「……ちょっとだけ、中身確認するだけ」

自分に言い訳するように呟いて、私は木箱を持ち上げた。

一一その瞬間。
校舎のどこかで、ギィッ……っと金具が軋むような音が響いた。

まるで、見えない何かの扉が開いたような。
私はゾクリと、肌寒い感覚に肩を竦めた。

「…なぁ、やっぱ、早く帰ろうぜ」

その夜、家に帰ってからもあの木箱の感触が、頭に残った。鞄の中から、こっそり持ち帰ってきた木箱を、ついに開けてしまった。

中から出てきたのは、いつのものか分からないくすんだセピア色の写真だった。
何人かの生徒が校舎の前に並んで笑っている姿が写っている。だけど、どこか不気味さを感じるような笑顔だ。
ガラス越しにランプの光が滲み、どことなく気味が悪い。

そのうちの中央の1人にふと目が留まった。
一一その人物の手には、見覚えのあるあの木箱に入っていたものとそっくりな古い鍵が握られている。

「…この鍵…?」

そう呟きながら、私は無意識か写真の鍵部分を指先でなぞっていた。
ほんのり、紙の手触りが冷たくなった。

その瞬間、背後で風が吹いた気がした。
部屋の空気が重くなった一一と思ったと同時に、体の周りをぐるりと何かに包まれたような感覚に襲われた。

気がつけば私は、部屋の中ではなく、見知らぬ廊下にたっていた。
でも何処か歪んでいて、窓の外は真っ暗で何も見えない。
さっきまでいた自分の部屋の感覚が、指先からするりと抜け落ちる。

「……え?」

息を吸った瞬間、空気が冷たすぎて喉が痛んだ。

窓の外は、夜じゃない。
“何もない”黒だった。

振り返る。
――後ろにあったはずのドアが、ない。

壁にどこの国のものでもないような不思議な文字の文が浮かんでいる。読める筈がないのに、読めてしまった。

『写真の“鍵”に、導かれし者へ
今、運命の扉が開かれる
勇気を持つか、後悔で終わるか
選びし時、夜は歩き出す――』

心臓がドクン、と大きく鳴った。

「選ばれた……の?」

耳元で、小さな誰かの囁き声が聞こえた気がした。