泥団子みたいな私の恋

体育祭。
お弁当を誘おうと、人通りの少ない裏庭へ向かった私は、そこで足を止めた。
 木漏れ日の下、海翔と椋が並んでお弁当を広げている。
 いつもなら「混ぜて!」と割り込んでいただろう。けれど、二人の間に流れる穏やかで特別な空気が、私の足を金縛りにした。
 私は逃げるように教室へ戻る。

​「あれ? 美瑠、いつもの旦那さんは?」

 クラスメイトの茶化す声に、私は顔が引きつるのを必死で抑えて、いつもの「明るい私」を演じた。

「もう! いつも一緒なわけじゃないんだからね!?」

 おどけて見せる。胸の奥が、焼けるように熱い。

​ 午後の借り物競争。椋が海翔の手を引いて、全力でゴールを駆け抜けた。
 お題は何だったのか。海翔は照れくさそうに頭を掻き、椋は満足げに笑っている。
 わからないからこそ、想像が膨らんで胸がムズムズとかき乱される。

​ そして、運命のクラス対抗リレー。
 第四走者の椋が、カーブで派手に転倒した。

「相模さん!」

 誰よりも早くコースに飛び出したのは、海翔だった。
 彼は躊躇なく椋を背負い、保健室へと走り去る。クラス中の視線が、英雄のような彼と、守られるヒロインのような彼女に注がれた。

​ 競技が終わった後。私は重い足取りで保健室へ向かった。
 閉まった扉の向こうから、楽しげな二人の声が漏れてくる。

「……痛いってば、海翔くん!」
「我慢しろよ、消毒しないとだろ?」

​ 私は一度、大きく深呼吸をした。
 肺に溜まったドロドロの感情を吐き出すように。
 そして、何も聞いていなかったような顔を作って、勢いよく扉を開ける。

​「二人とも! 大丈夫? 心配して来ちゃった」

​ 心にもない言葉。けれど、私の顔には完璧な「友達」の笑顔が張り付いていた。