高校二年生、春。
教室の扉が開いた瞬間、空気が凍りついた。
「相模 椋です。よろしくお願いします」
その一言で、教室の空気が変わった。
誰も何も言ってないのに、全員が同じことを思ってる。
――綺麗。
私は無意識に、自分の手を見る。
毎日ケアしてる指先。
でも、彼女のそれは、何もしていないみたいに自然で。
勝てない、って思った。
その瞬間に。
努力で埋められる差じゃないと、理解してしまった。
私は、アイラインの一ミリに命をかけている。
けれど彼女は、うっすらとした最低限のメイクだけで、教室の全視線を独占した。
私が必死にアイロンで伸ばしている茶髪の癖っ毛を嘲笑うかのような、重力さえ感じさせない黒髪さらさらロング。
「甘いものが大好きなんです」と笑う彼女の腰回りは、腹筋を欠かさない私よりもずっと細かった。
そして、何より私を絶望させたのは。
「……可愛いな」
隣の席で、海翔が。
私が三年間、一度も向けられたことのないような熱を帯びた瞳で、椋を見つめていたことだった。
教室の扉が開いた瞬間、空気が凍りついた。
「相模 椋です。よろしくお願いします」
その一言で、教室の空気が変わった。
誰も何も言ってないのに、全員が同じことを思ってる。
――綺麗。
私は無意識に、自分の手を見る。
毎日ケアしてる指先。
でも、彼女のそれは、何もしていないみたいに自然で。
勝てない、って思った。
その瞬間に。
努力で埋められる差じゃないと、理解してしまった。
私は、アイラインの一ミリに命をかけている。
けれど彼女は、うっすらとした最低限のメイクだけで、教室の全視線を独占した。
私が必死にアイロンで伸ばしている茶髪の癖っ毛を嘲笑うかのような、重力さえ感じさせない黒髪さらさらロング。
「甘いものが大好きなんです」と笑う彼女の腰回りは、腹筋を欠かさない私よりもずっと細かった。
そして、何より私を絶望させたのは。
「……可愛いな」
隣の席で、海翔が。
私が三年間、一度も向けられたことのないような熱を帯びた瞳で、椋を見つめていたことだった。


