夕焼け烏に茜色

季節は春。朝の気温はまだ肌寒いけど、吹いている風は数週間前よりも確実に暖かくなり、ほのかに照る太陽の暖かさが心地いい。
私はいつものように、マンションの階段を上る。今日から環境がガラッと変わるというのに、これだけは今までと同じだ。少なくともこれからも三年間はきっと。
もう何百回と訪れて見慣れたドアの前に立ち、私はインターホンを押した。もうここまでなら目をつぶってでも来られそうだ。
ピンポーン、と明るい音が鳴り、続いてドアが勢いよく開いた。いつもはドタバタ支度しているのに、と不思議に思ったが、すぐに理由を思い立った。
ー今日はやっぱり、特別な日だからか。
遅刻を心配して少し早めに来たが、杞憂だったようだ。
出てきた私の親友は、私を見るなり目を輝かせた。
「おはようあかねちゃん!制服めっちゃ似合ってるね、かわいい!」
…かわいい。やばい。まじやばい。
「ありがとー。美晴も世界一可愛いよ」
冷静に返しながらも、頭の中で親友に悶える。だってしょうがない。この子可愛いんだもの。
「えへへ、そうかなぁ。あかねちゃんの方が絶対可愛いよお」
美晴は少し頬を染め、恥ずかしそうに頭を掻いた。
はい照れてる可愛いー。100億満点でっす。
真顔で美晴を撫で回す私は相当不審に見えたらしい。通りすがりのお隣さん親子がなんとも言えない目で見てきた。なにしてんのこの子、と。