妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 私の部屋は二階の南側にあり、リュオンの部屋は二階の北側にある。

 私の部屋の窓からはラスファルの整然とした美しい街並みが。

 対してリュオンの部屋の窓から見えるのは、遠く連なる山の稜線と、街の北側に広がるラスファルの兵士たちの訓練場だった。

 ロドリー王国の各貴族は国内にそれぞれ領地を持っており、国王から政治と防衛を任されている。

 己の領地を守る兵士の育成は領主の重要な仕事の一つだ。

 二十年前、隣国バレスタとの間に起きた戦で国内外にその武名を轟かせたバートラム様とスザンヌ様は――バレスタからロドリーに嫁がれたスザンヌ様はバレスタでも指折りの武人だったそうだ――たまに訓練場に赴いて兵士たちの訓練状況を視察し、場合によっては自ら剣を振って指導することもあるという。

 国軍近衛隊長のノエル様は実家に戻って来てからというもの、頻繁に兵士たちの鍛錬を行っている。

 そのおかげなのか、ラスファルの兵士は勇猛果敢、戦においては常勝無敗。

 街を覆う結界を張っているリュオンが「おれはいなくてもいいんじゃないかと思う」と零すのも納得だ。

 この街は『大魔導師』がいなくなっても充分にやっていける。

 事実、リュオンが結界を張らないまま今日で一週間が経っても、街の治安は問題なく維持されていた。

 人間の言葉など通用しない凶暴な魔獣も本能で避けているのか、この街が魔獣に襲われたのはもう三年も前のことらしい。