妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「私を受け入れて庇護してくださった伯爵家の皆さまには何度お礼を言っても足りません。マルグリットたちも養女となったことを祝福してくれましたし、ここにいる人たちは本当に温かくて、優しくて、大好きです。最高の職場を紹介してくれたリュオンには頭が上がりませんよ」

「そのリュオンだが。いまは怪我のせいで熱を出して寝込んでいるぞ」
 ノエル様の隣を四本の足で歩きながらユリウス様が言った。

「……そうみたいですね。ネクターさんに聞きました。心配です」
 首を軽く傾け、リュオンの部屋がある屋敷の一角を見上げる。

「うん。だから、セラはリュオンの看病をしてあげてくれる? セラが傍にいたら回復も早くなると思うんだよね」
 ノエル様は私の手から洗濯物を取り上げた。
 いますぐ行け、ということだろうか。

「どうだろうな。むしろ熱が上がって、回復が遠ざかるのでは?」
 地面に残る小さな水たまりを迂回しつつ、紫の瞳でユリウス様が弟を見上げた。

「まあ、その可能性も否定できないけど。でも、弱ってるときに傍にいて欲しいのはセラでしょう」
 ノエル様はユリウス様を見下ろして笑った。
 兄弟が目を合わせて会話している、ただそれだけのことがとても嬉しい。

「それは確かに。セラお手製のすりおろしリンゴとか、凄く食べたいだろうな。きっとどんな薬よりも強力な効果を発揮するに違いない」
「どういうことです? 私にそんな力はありませんが……」
 妙に確信を持って言う黒猫を見て、私は首を傾げた。