妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「すみませんネクターさん、寝坊してしまいました!!」
 いつもより二時間も遅刻してしまった翌朝、私は大慌てで厨房に駆け込んだ。

「おや、おはようございます。そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。ユリウス様たちの朝食の片付けはもう終わりましたし、特に急いでやることはありません」

「本当に申し訳ありませんっ」
 じゃがいもの皮むきをしていたネクターさんに向かって、私は深々と頭を下げた。

 ああ、大失敗だ。
 これでは伯爵夫妻の養女になったから気を抜いたと叱責されてもおかしくはない。

「本当に大丈夫ですから。私はこれまで一人で厨房を担当してきたんですよ? それに、この屋敷に住んでいるのは私を含めてたった五人です。本当は一人でも余裕なんですよ」

「……すみません……」
「ええ、反省の気持ちは十分に伝わりましたから、もう謝らないでください。起きたばかりでお腹が空いているでしょう? 第二食堂に朝食を用意しています。食べてください」
 第二食堂とは、厨房に隣接した使用人用の食堂のことだ。

「ありがとうございます。食べたら精一杯働きますので、私の分の仕事を残しておいてくださいね! 下ごしらえでもお皿磨きでも何でもしますから!」
「いえ、私の補助は良いので洗濯をしてもらえますか。リュオンが寝込んでいるため、ノエル様が洗濯をしてくださっているんですよ」

「それを早く言ってくださいっ!!」
 私はお仕着せの裾を翻し、全力で洗濯場に走った。