妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 頭の中はもう大混乱。

 落ち着けセラ、彼が優しくしてくれたのは何も特別なことではない。

 彼は困っている人を放っておけないお人好しだから、たとえ相手が私でなくたって同じことをしたはずだ。

 たまたま私がとんでもない魔法を持っていたから、伯爵夫妻の庇護下にいたほうがいいだろうと思って、善意で対処してくれただけ。

 そうだ、そうに決まっていると、頭ではわかっているのに。

 何故私の顔はこんなにも熱く、ドキドキと胸が鳴っているのだろう?

「…………寝ようっ」
 私はすっくと立ち上がってランプを持ち、二階の自室に戻った。

 しかし、寝間着に着替えて布団に潜り込んだ後も。
 私の頭を撫でたリュオンの手の感触とか、彼の手の温かさとか、意外と硬い胸の感触とか。

 拗ねた顔が可愛いとか、怒った顔はちょっと怖いとか、 無邪気な笑顔とか――そんなことばかり考えてしまい、どうにも眠れないのだった。