妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 私を家族の一員として迎えることを許してくれたユリウス様とノエル様に改めてお礼を言った後、私は本館に行って伯爵夫妻に深く頭を下げた。

 伯爵夫妻と話し込んでいるうちに夜も更け、ランプ片手に別館に戻るとサロンには誰もいなくなっていた。

 みんなそれぞれの部屋に戻ったようだ。

 明かりを落としたサロンは暗い。
 閉ざされたカーテンの外から絶えず聞こえる雨の音が耳につく、それほどの静寂。

 私は煌々と輝くランプをテーブルに置いてサロンの長椅子に座った。

 リュオンが座っていた場所――天鵞絨が張られた長椅子の表面をそっと撫でてから、変態的な行為をしていることを自覚して顔が熱くなる。

 ――少しでもセラのためになると思ったらおれはなんでもやる。

「~~~~っ」
 彼が耳元で囁いた言葉をまざまざと思い出して、私は両手で顔を覆った。

 あの台詞は反則だと思う。
 だって、私のために命懸けで魔獣と戦って、傷だらけになって。

 さらに私を抱きしめて、あんなことを言われたら――もしかしたら彼は私のことが好きなのでは? などと、とんでもなく都合の良い勘違いをしてしまいそうになるではないか!!

 ――泣くことで少しでもセラの気分が晴れるなら、この先いくらだって付き合うよ。

 そういえばそんなことも言われたわよね、ともう一人の自分が意味深に笑い、もう一人の自分が恥ずかしさに頭を抱えてのたうち回り、あんなの愛想に決まってるじゃないと冷静なもう一人の自分が冷めた声で言う。