妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「……セラ?」
 背もたれに身体を預け、疲れ切った様子で目を閉じていたリュオンはふと目を開けて私を見て、ギョッとしたような顔をした。

 泣くまいと思っても涙が溢れて止まらない。

 恐らくリュオンは半月前、私の魔法を知った直後から迅速に行動を起こした。

 エンドリーネ伯爵夫妻を説得し、庇護を求めた。

 たとえ形式上でも私が伯爵夫妻の養女になれば、いざというときはラスファルの兵を動かすことだってできるし、仮にレアノールから追手が来てもセレスティア・ブランシュとは別人だと言い張ることができる。

 私の身分証明書と一緒に入っていたのは一枚の信書だった。

『セラ・エンドリーネを自国の民と認める』――見たことがないけれど、これは多分、国王の字だ。

 その紙には、もし自国民である私に手を出した場合は相応の報復をする旨が書いてある。

 これにはレアノールの国王だってひれ伏すに違いない。
 何しろロドリー王国はウルガルド帝国と対等以上の武力を持つ大国だ。
 小国のレアノールは敵国とみなされた時点で終わりである。