妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「セラ。驚かないよう先に言っておくが、リュオンは怪我をしている」
 サロンに向かって歩きながら、ユリウス様は気づかうように私を振り返って言った。

「えっ!? どうしてですか!?」
「まあ、色々あったんだろうな……でも、命に別状はないから心配は要らない」
 開けっ放しの扉からサロンに入ると、長椅子に座ってノエル様の手当てを受けているリュオンがいた。

 リュオンの左の前腕には目を背けたくなるほど酷い傷があった。
 ノエル様はリュオンの前に屈んで清潔な包帯を手に取り、いままさに巻こうとしているところだった。

 テーブルの上には救急箱。
 そして、リュオンの足元には血で汚れた上着と黒い鞄が置いてあった。

「セラ、久しぶり。ただいま。元気そうで何より」
 リュオンは私に気づいて明るく笑った。
 でも、リュオンの顔色は青ざめていて、明らかに具合が悪そうだ。