妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 降りしきる雨の音を聞きながら、私はノエル様の手を握る自分の右手に左手を重ねて力を込めた。

「ユリウス様はノエル様のことが大好きなんですよ。お疑いになるなら、どうか、ユリウス様とお話をしてください。ユリウス様はノエル様との対話を望まれています。八年前からずっと、ユリウス様はノエル様に許されたいと思われていたんです」

「……馬鹿みたいだ。許されたいのはぼくのほうなのに」

 兄弟で仲睦まじく遊んでいた過去を回想しているのか、ノエル様はどこか遠くを見るような眼差しで、ぽつりと呟いた。

 決断を待っていると、ややあってノエル様は私の手を握り返した。
 それから、手を離して立ち上がる。

「兄さんはサロンにいるよね?」
 私を見下ろすノエル様の表情には強い意思が宿っている。

「はい!」
 私は跳ねるように立って大きく頷いた。