妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「ノエル様はユリウス様がドロシーの誘いに乗ったのは自分のせいだと思っているのでしょう? ユリウス様が激情のままに言ってしまった言葉をいつまでも忘れられないんでしょう?」

 ――お前がいるから俺はこんなにも辛い、大嫌いだ、お前なんかいなければ良かった。

 ユリウス様はノエル様に言った言葉を後悔している。
 そして、己の言動を後悔しているのはノエル様も同じだった。

 でも、幼かったノエル様の行動原理は『知識や技術、能力を磨いて大好きな兄に褒められたい』それだけだ。

 強いて言うなら、弟に間違いや失敗を指摘される兄の心境を想像する力が足りなかったのかもしれないけれど――誰が責めることなどできようか。

「ノエル様」
 私は立ち上がって移動し、ノエル様の隣に座った。
 俯き加減に動かないノエル様の手を右手で握る。

「ユリウス様にわざと嫌われようとするのは止めてください。ノエル様は悪くありません。自分を責める必要はないんです。ユリウス様がドロシーの誘いに乗ってしまったのは決してノエル様のせいではありません。人間誰しも心が弱ることはあります。全部自分のせいだ、自分が弱かったせいだとユリウス様は言われていました。ユリウス様は八年前の言動を深く反省し、後悔されています。もしノエル様が過去の過ちを許してくださるなら、昔のように仲良くしたいと仰っていましたよ?」

「……兄さんがそんなことを?」
 当惑したようにノエル様は私を見つめた。

「はい。私は今日、ユリウス様に聞いたんです。ノエル様のことがお嫌いですかと。そしたら、ユリウス様は好きに決まっていると答えられました。当たり前のように」

 ノエル様はテーブルに視線を落とし、考え込むように押し黙っている。