「ノエル様はユリウス様の代行をするためにバートラム様から呼び戻されたのですよね? バートラム様と速やかな意思疎通を図るためにも、本館で暮らしたほうが何かと都合が良いはずです。それなのにノエル様はユリウス様がおられる別館で暮らされている。理屈に合いません」
「兄さんが伯爵家の顔に泥を塗らないか監視しているだけだよ。変身魔法は国で禁じられた魔法だ。もし猫になることが露見すれば伯爵家は破滅する。セラもレアノールの伯爵令嬢だったなら、貴族は体面が命だってことくらいわかるでしょう」
ノエル様の理論武装は完璧といえた。
でも、私は悲しく笑った。
「……では何故、ノエル様は笑うことを止めてしまったんですか?」
その問いに対する答えは用意していなかったらしく、ノエル様は口をつぐんだ。
「私はバートラム様やスザンヌ様、長く伯爵家に仕えている侍女たちにも聞きました。昔のノエル様は感情豊かで、よく笑う子どもだったそうですね。ユリウス様の後をいつもついて回り、二人仲良く遊んでいたと皆、口を揃えて証言してくれました」
「昔の話なんてどうでもいいだろう」
ほんのわずかに、ノエル様の見慣れた無表情に苛立ちという名の亀裂が入った。
「いいえ、どうでも良くなんてありません」
バートラム様に聞いたところ、ノエル様は人前では愛想を振りまき、昔と変わらずよく笑い、社交も上手だという。
それなのに、ユリウス様のいるこの別館では感情を固く内側に封じ込め、決して表に出そうとしない。
まるで自分を罰するように。
その理由は――
「兄さんが伯爵家の顔に泥を塗らないか監視しているだけだよ。変身魔法は国で禁じられた魔法だ。もし猫になることが露見すれば伯爵家は破滅する。セラもレアノールの伯爵令嬢だったなら、貴族は体面が命だってことくらいわかるでしょう」
ノエル様の理論武装は完璧といえた。
でも、私は悲しく笑った。
「……では何故、ノエル様は笑うことを止めてしまったんですか?」
その問いに対する答えは用意していなかったらしく、ノエル様は口をつぐんだ。
「私はバートラム様やスザンヌ様、長く伯爵家に仕えている侍女たちにも聞きました。昔のノエル様は感情豊かで、よく笑う子どもだったそうですね。ユリウス様の後をいつもついて回り、二人仲良く遊んでいたと皆、口を揃えて証言してくれました」
「昔の話なんてどうでもいいだろう」
ほんのわずかに、ノエル様の見慣れた無表情に苛立ちという名の亀裂が入った。
「いいえ、どうでも良くなんてありません」
バートラム様に聞いたところ、ノエル様は人前では愛想を振りまき、昔と変わらずよく笑い、社交も上手だという。
それなのに、ユリウス様のいるこの別館では感情を固く内側に封じ込め、決して表に出そうとしない。
まるで自分を罰するように。
その理由は――

