妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「ノエル様。夕食まで少しお時間をいだたけませんか。話したいことがあるんです」

 雨音が聞こえるほど静かな屋敷の三階廊下。
 閉ざされたノエル様の部屋の扉に向かって私は呼びかけた。

「さっきぼくは疲れてるって言ったんだけど、聞こえなかった?」
 扉の向こうから返事が返ってきた。

「いえ、聞こえました。でも、いますぐお話ししたいんです。どうしても」
 数秒経って、内側から扉が開く。

「何の話がしたいの」
 部屋着に着替えたノエル様は無感情に私を見つめた。

「ユリウス様のお話を――」
 無言でノエル様が扉を閉めようとしたため、私はとっさに扉の端を掴んだ。
 閉めようとする力と開けようとする力が同時にかかり、私たちの間で扉が震える。

「お忘れですかノエル様。私は侍女です。ノエル様の部屋の鍵も持っているんですよ。無駄な抵抗はお止めください」
 私は全力で抗いながら、にこやかに告げた。

「職権乱用でしょう……」
 呆れたように言ってノエル様は嘆息し、ドアノブから手を離した。

「わかった。入って」
「ありがとうございます!」
 私は頭を下げてから入室した。