彼女は当時国内に二人しかいなかった『大魔導師』だった。
ドロシーはユリウス様の浮かない表情を見て、猫になることを持ちかけた。
天才の弟と比較されることに疲れ切り、変身魔法が禁止魔法だと知らなかった十歳のユリウス様はその問いに頷いてしまい、猫になった。
後は私の知る通り。
一年後にユリウス様がリュオンの手により人間に戻っても、兄弟の関係はぎくしゃくしたまま。
ユリウス様は弟に負い目を感じ、ノエル様は兄の前では一切笑わなくなった。
「ユリウス様はノエル様をどう思っておられるんですか? 本当はいまでも大好きで、仲直りしたいのではないんですか?」
「…………」
ユリウス様は長いこと黙り込んだまま何も言わなかった。
風が何往復もして、黒猫はやっと口を開いた。
「今朝のあいつの顔を見ただろう。猫になった俺を見下しきった、あの瞳が答えだ。俺があいつをどう思おうと無駄なんだ。嫌いという感情を通り越して、ノエルは俺を軽蔑してる」
「答えになっていません。私が聞いているのはユリウス様の気持ちです」
無礼なのはわかっていた。
侍女の分際で何を偉そうに、と自分でも思う。
でも、私は冷え切った二人の関係をどうにかしたいのだ。
ドロシーはユリウス様の浮かない表情を見て、猫になることを持ちかけた。
天才の弟と比較されることに疲れ切り、変身魔法が禁止魔法だと知らなかった十歳のユリウス様はその問いに頷いてしまい、猫になった。
後は私の知る通り。
一年後にユリウス様がリュオンの手により人間に戻っても、兄弟の関係はぎくしゃくしたまま。
ユリウス様は弟に負い目を感じ、ノエル様は兄の前では一切笑わなくなった。
「ユリウス様はノエル様をどう思っておられるんですか? 本当はいまでも大好きで、仲直りしたいのではないんですか?」
「…………」
ユリウス様は長いこと黙り込んだまま何も言わなかった。
風が何往復もして、黒猫はやっと口を開いた。
「今朝のあいつの顔を見ただろう。猫になった俺を見下しきった、あの瞳が答えだ。俺があいつをどう思おうと無駄なんだ。嫌いという感情を通り越して、ノエルは俺を軽蔑してる」
「答えになっていません。私が聞いているのはユリウス様の気持ちです」
無礼なのはわかっていた。
侍女の分際で何を偉そうに、と自分でも思う。
でも、私は冷え切った二人の関係をどうにかしたいのだ。

