妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 ノエル様は非常に優秀な子どもだった。

 要領が良い上に頭も良く、人当たりも良いため誰からも愛される。
 四歳にして完璧な行儀作法を身に着け、専門書を読み、流暢な外国語を話す。

 ユリウス様が教師の問いに間違えれば横から正答し、ときには教師と一緒になって解説することもあった。

 たまったものではなかっただろうが、ユリウス様もノエル様に悪気がないことはわかっていた。

 だから笑ってノエル様を褒めた。

 調子に乗ったノエル様は勉学にのめり込み、真綿が水を吸うようにあらゆる知識を吸収し、周りの人間から神童として持て囃された。

 事あるごとに弟と比較され、ノエル様が兄だったら良かったのにという家庭教師や使用人たちの心無い言葉を受け流し、ユリウス様は耐えた。

 耐えて耐えて耐え続けて――三年が経ち、とうとうユリウス様に我慢の限界が訪れる。

 ユリウス様は授業中、無邪気に間違いを指摘してきたノエル様を突き飛ばし、涙ながらに罵倒した。

 呆気に取られているノエル様を残してユリウス様は屋敷を飛び出し、ラスファルの公園へと向かった。

 ユリウス様は猫が好きで、疲れたときはこっそり公園へ行き、そこに棲みついた野良猫たちに癒されていた。

 公園のベンチで野良猫を抱え、自己嫌悪で死にそうになっていたユリウス様は一人の魔女に声をかけられる。

 黒髪に印象的な銀色の瞳を持つその魔女の名前はドロシー・ユーグレース。