妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「……というわけで、私は双子の妹と仲たがいしたまま国を出ることになりました。私たち姉妹の関係の修復は不可能です」

 私が無意識に『他人の魔力を増幅する魔法』 を使い、イノーラを《国守りの魔女》にしていた事実を知ったら、イノーラは私に感謝するどころか逆上するだろう。

 お前にそんな力があっていいはずがないと取り乱し、胸倉を掴んで喚き、私を傍に縛り付けようとする。

 それこそ、どんな手段を使ってもだ。

 口元に乾いた笑みが浮かぶ。

 ――ああ、やっぱり。
 私を見下し、罵倒し、利用しようとする姿は容易に想像できるのに、イノーラが私を愛する姿など全く想像できない。

「私と妹が分かり合える日は永遠に来ないでしょう。でも、ユリウス様とノエル様は違うのではないでしょうか。差し出がましいこととは存じますが、私は別館はもちろん、本館でも聞き込みをしました。お二人は、昔はとても仲が良かったのですよね?」

 兄弟の間に亀裂が生じたのは、ユリウス様が七歳を迎え、本格的に貴族としての教育を受け始めた頃だ。

 大好きな兄にいつもついて回っていたノエル様は、ユリウス様が帝王学を学ぶときも同じ部屋にいることを望んだ。

 四歳の子どもが理解するには難解すぎる内容だったため、すぐに退屈して逃げるだろうと家庭教師やエンドリーネ伯爵夫妻は踏んでいた。

 しかし、予想に反してノエル様はおとなしく椅子に座り、家庭教師の言葉に耳を傾けた。

 その日の夜、晩餐の席でノエル様はたった一度聞いただけの教師の言葉を一言一句違わず復唱してみせ、エンドリーネ伯爵夫妻や使用人たちの度肝を抜いた。