妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 声をかけるべきか否か。
 誰しも一人になりたいときはある。

 迷った末に、私は手に持っていた鋏を花壇の横に置いてユリウス様に近づいた。

 足音に反応して、黒猫の耳がぴくりと動く。
 黒猫は身体を捻ってこちらを見た。

「……ユリウス様。良かったら私とお話しませんか」
 ユリウス様の負担にならないように、私は会話には少し遠い距離で足を止めた。

「どんな話を?」
 試すような口調でユリウス様が言う。

「ノエル様のお話はいかがでしょう」
 ユリウス様の耳がまたぴくっと動いた。

 個人の深い事情に踏み込みたいなら、こちらもまた話をするのが礼儀だ。

 私は覚悟を決めて、ユリウス様に自分の過去を打ち明けた。包み隠さず、全てを。