妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「愛されてるみたいであの猫も幸せね。そうだ、セラ。介抱してもらったお礼にこれあげる」

 アマンダさんはポケットに手を入れてごそごそと動かし、護符のようなものを私に手渡した。

 赤い紙には何やら複雑な図形と文字が書かれている。

 魔法陣のようにも見えるが、こんな複雑な形の魔法陣など見たことがなかった。

「もしこの先、セラがどうしようもなく困ったときはこれを破いて、適当に放り投げて。大抵の問題は解決してあげる」

「……? なんですかこれは?」
「内緒。それ、作るの超大変な貴重品だから大事にしてよね。機会があればまた会いましょう。じゃあねー」

 アマンダさんは手を振り、赤い髪を風になびかせながら去っていった。

 私と話しているうちに酔いは覚めたのか、足取りはしっかりしていて、もう心配はなさそうだ。

「……なんだったんだ、あの女は」
 アマンダさんが十分に離れるのを待ってから、ユリウス様が近づいてきた。

「さあ。でも、陽気で面白い人でしたね。お酒の飲みすぎには注意して欲しいですが……お屋敷に戻りましょう、ユリウス様。スコップを取ってこないと」

 私は赤い護符をポケットに入れて歩き始めた。