妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「? アマンダさん、でいいんですか?」
「うんうん。アマンダさんでいいや、それでいきましょう。セラはあの立派なお屋敷で働いてるの?」

 アマンダさんは丘の上に立つ伯爵邸を見上げた。

「はい」
「それじゃ、あの猫はお屋敷のペット?」
 アマンダさんは右手にある植え込みを指差した。

 植え込みの陰からこちらを見ていた黒猫は、アマンダさんに急に指さされて驚いたのか、さっと植え込みの後ろに引っ込んだ。

 あれ、ユリウス様?
 ついてきてたのか。

 女性が苦手なのに、私のことを心配して、おっかなびっくりついてきてくれたのかもしれない。

 そう思うと胸の奥が温かくなり、知らないうちに微笑が浮かぶ。

「いえ、ペットではありません。あの猫は伯爵家の家族の一員です。伯爵家にとっても私にとっても大事な猫です」
「ふうん、そう。本当に大事なのね。表情を見てればわかるわ」
 アマンダさんは艶やかな唇の端を上げた。

 不意に吹き付けてきた風に、燃え上がる炎のような彼女の赤髪がふわふわ踊っている。