妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 物干し場で洗濯物を干し終えた私は達成感を覚えながら風にはためく衣類を見つめた。

 雨が降りそうな天気だが、実際に雨が降り出したら洗濯物を取り込めば良いだろう。

 今日は外出の予定もないため随時対応可能だ。

「戻りましょうか、ユリウス様」
 私は空になった洗濯籠を両手で抱えて言った。

 物干し場の隅にはちょこんとお座りした黒猫が――ユリウス様がいる。

 彼は私が洗濯物を洗い始めてから干し終わるまで、一連の作業を遠巻きに観察していた。
 猫になって何もできず、暇なのかもしれない。

「ああ。お疲れ様。お前は本当に、万事において手際が良いな。伯爵令嬢というのが信じられない」

 私を屋敷まで導くように、私の前方を四本の足で可愛らしくとてとて歩きながら、赤いスカーフを首に巻いたユリウス様が振り返って言う。

 お褒めの言葉を頂きました。
 やっぱり直接言われると嬉しいものですね。

「ありがとうございます」
 伯爵令嬢というのはただの肩書で、家ではこき使われていましたし、実際は妹の侍女みたいなものでした――とは言わないほうがいいだろう。

 ユリウス様はお優しいお方だ。
 ただでさえ猫になって大変なのに、余計な心労をかけるようなことは言いたくない。