妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 私は青ざめて震え、ちらりと横目でユリウス様の様子を窺い、
「あっ!」
 と、つい声をあげてしまった。

 今回は私が接触したせいではなく、ノエル様の辛辣な一言がユリウス様の繊細な心に大ダメージを与えてしまったらしく、ユリウス様は猫になっていた。

 寝間着の上で黒猫がうずくまり、前足の間に顔を埋めている。
 俗に言う『ごめん寝』の状態だ。

「大変!」
 私はユリウス様の元に駆け付けて屈んだ。

 リュオンはいないのに、どうしよう!?

 首を捻ってノエル様を見る。
 ノエル様はこれ以上なく冷ややかな眼差しを兄に注いでいた。

 そして、無言で背中を向けて歩き去る。

 猫になった兄を放置して行っちゃったー!!?

 いや、ノエル様には大事な用事がある。
 ここは私がなんとかせねば!