妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 心配されるのは素直に嬉しい。
 でも、ちょっと彼は過保護なような気もする。

 彼は今頃、王都で何をしているのだろうか?
 元気ならそれでいいのだけれど……。

「行ってらっしゃいませ」
 頭を下げたそのとき、ふと背後に人の気配を感じた。

 振り返れば、開け放った扉の先、玄関ホールにユリウス様が立っていた。

 少し癖のある黒髪には寝癖がついていて、服は寝間着のまま。
 ノエル様とは対照的に、色々と隙だらけである。

「……あの。なんというか。……悪いなノエル。よろしく頼む」
 気を利かせて移動するかどうか迷っていると、ユリウス様が言った。

 嫡男としての仕事を代行させている負い目があるらしく、ユリウス様は台詞の最後に小さく頭を下げた。

「悪いと思って謝るくらいなら、早く猫になる癖を治せば?」

 ノエル様は冷酷とも取れる声音でそう返した。

 じ、実の兄にも手厳しい……そんな簡単に治せるものなら治してますよノエル様!?