妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「じゃあ行ってくる」

 凍った冬の湖面を思わせる水色の瞳を私に向けて、ノエル様は玄関先でそう告げた。

 今日の天気は曇り。
 ノエル様の頭上の空には灰色の雲が広がっている。

 洗濯物を干しても大丈夫かな。
 侍女としてはそんな心配が真っ先に浮かぶ。

 魔法で洗濯物の洗浄や乾燥作業をこなしてくれるリュオンがいれば天候の心配をする必要はないのだが、彼は王都に用事があると言って旅立った。

 出発当初は三日で帰ってくると言っていたのに、予定が伸びたとかでもう六日も帰ってきていない。

 リュオンはラスファルを守る結界を解除していったため、ラスファルの兵士たちは気を張っている。

 幸いなことに、この六日間、街は至って平和だった。

 願わくばこのままずっと平和でいて欲しいものだ。

 リュオンは旅立ちの前夜、私に「おれがいない間は絶対に一人で出歩くな、どうしてもというなら腕の立つノエルに守ってもらえ」と念押しした。

 なんでも、私は『他人の魔力を増幅する魔法』という、なんとも珍しい魔法を魔法陣もなしに常時発動しているらしい。

 そのせいで魔法が使えないのだろうとリュオンは推測していた。

 私の魔法は世界で唯一無二で、他人に知られたら大層危険らしいけれど、でも、誰かに狙われたことなんて一度もないんだけどなあ。