妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

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 私がエンドリーネ伯爵邸の別館で働き始めて半月が経った。

 朝。

 お仕着せを着た私は一階にある立派な厨房でネクターさんの助手として働いていた。

 手際よく野菜を洗って水を切り、真っ白な皿に盛りつけていく。

 私がサラダの上にトマトを飾る一方で、ネクターさんは焼きたてのパンの上にベーコンと卵を乗せていた。

 ネクターさんは物腰柔らかな男性で、亜麻色の髪とモスグリーンの瞳をしている。
 年齢は四十二歳。

 代々料理人として伯爵家に仕えている家柄の出身で、十三歳のときから見習いとして働いていたそう。

「どうでしょう?」
 サラダを盛りつけた皿を見せると、ネクターさんは「合格です」と微笑んだ。

「やはり女性がいると屋敷が華やかになりますね。もうこの屋敷の中で女性を見ることはないのだろうかと懸念していましたので、セラが来てくれてとても嬉しいですよ」

「そう言っていただけて光栄です。ノエル様には二階に日当たりの良い素敵な部屋まで用意して頂きましたし、侍女としてお役に立てるように頑張ります」

 私が挨拶した後、すぐに二階へと引き返していったノエル様は、なんと私の部屋を整えてくれていた。

 てっきりノエル様には歓迎されていないと思っていたから驚いたし、感動した。

 感謝の言葉を述べると「侍女の部屋を用意するのは主人の役目でしょう」とそっけなく言われた。