妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「僕は二十歳。ちなみにブラッドさんは二十七だよ」
「年齢などどうでもいいだろう。呑気に雑談している場合か。これが王命である以上、俺たちは速やかに任務を果たす義務がある。イノーラと良く似た人物が目撃されたというボスタ港へ向かうぞ。ついてこい」

 ブラッドが歩き出したため、仕方なく私もエミリオも雑談を止めて後に続いた。

「よくこんな任務にやる気を出せますね、ブラッドさん。僕は正直、いますぐ騎士団寮に引き返して布団をかぶって寝たいです。この一日をなかったことにしたい」

「同感です」
 私は右手の中指で眼鏡を押し上げ、ため息をついた。

 筆頭宮廷魔女から聞いた話はこうだ――あろうことか、クロード王子が手引きしてイノーラは貴人用の牢から脱走し、そのままクロード王子と共に逃亡した。

 イノーラの隣の牢に収監されていた罪人が二人の会話内容を聞いていたのだが、イノーラは「こうなったのも全部セレスティアのせいだ、セレスティアが自分に呪いをかけたに違いない」と酷く恨んでいたらしい。

 セレスティアを逆恨みしていたというならば、イノーラは失踪したセレスティアの足取りを追うだろう。

 そしてそれは、皮肉なことに追手である私たちにとって好都合だった。

 国王は私たち三人にイノーラとクロード王子、さらにセレスティアの捕縛を命じた。

 表立って軍隊を動かさないのは出来る限り内密に、穏便に済ませたい理由があるからだ。