妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「本当よ。戦争の発端となったのは『始まりの魔女』の転生体の所有を巡る小競り合い。それが段々激化して、世界中を巻き込む泥沼の戦争になった。実戦投入された大量殺戮兵器や悍ましい魔法のせいで空気も大地も汚染され、異形の魔獣や魔人が生まれて――――聞いてて楽しい話じゃないから詳細は省くけど、それはもう大惨事よ。あたしが保護してなかったら、あのとき人間も魔女も全滅してたかもね」

 ドロシーは大げさな感情を表すことなく、書類の数値でも読み上げるような口調で言う。

 だからこそ、彼女の言葉は奇妙な真実味を帯びていて――あまりも衝撃的な話に、脳の処理が追い付かない。

「上に立つ人間や魔女が全員死んで戦争は終わった。生き残った人間と魔女は手を取り合って――もちろん、多少諍いはあったけど――傷ついた大地の修復と町の復興に励んだ。あたしは世界中を回り、行く先々で『世界が壊れてしまったのは戦争ではなく隕石のせいだった』と皆の記憶を改竄しつつ、『始まりの魔女』についての記録を全て消した。二度と悲劇が起きないように」

 ドロシーは淡々と言って紅茶を飲んだ。
 部屋に重苦しい沈黙が落ちる。

「……ドロシー。もしかして、『魔力増幅』の魔法を持つ魔女を巡って戦争が起きたの?」
 恐る恐る問う。