妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 ――おれが死んだら嫌?

 思い出す。私を戯れに抱きしめたリュオンの体温。私の耳元で彼は尋ねた。からかうように、ほんの少し笑みを含んだ調子で。

 ああ、いまなら言えるのに。
 リュオンがいなければ私は生きていけない。あなたを愛している。心からそう伝えるのに――

 突然、荒れ狂っていた風が止んだ。

 はっとして見れば、ノエル様を説得したらしいドロシーが立ち上がり、右手をリュオンに向かって突き出している。

 彼女のおかげで行く手を阻む風が止んだ。悟った。いまが好機だ。
 リュオンを止めて、気持ちを伝えられるのはいましかない。

 私は無我夢中で飛び出し、リュオンの頬を両手で掴んで引き寄せた。呪文が唱えられないように自分の口で彼の口を塞ぐ。

「――――!?」
 虚ろだったリュオンの瞳が驚きに見開かれる。
 自我を取り戻した彼は確かな意思をもって私を見た。

「リュオン。好きよ。あなたが好きなの」

 数秒して身体を引いた私は赤い《魔力環》が輝く彼の目をまっすぐに見つめて言った。