妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「止めなさいってば!! 死んじゃうわよあんた!! なんでそんな魔法知ってるのよ!? それは魔女の禁じ手、絶対やっちゃダメなやつでしょうが!!」
 すっかり余裕を失くしたドロシーが慌てふためいている。

「試すような真似をして悪かったわ、謝る!! あたしはただあんたの覚悟を確かめたかっただけなのよ!! 適当に一発食らったらセラを返すつもりだったんだって!! ほら、みんな解放するから!!」

 ドロシーが私を一瞥した途端に、光の膜と全身にかかっていた重圧が消え去った。

 ノエル様もユリウス様も同様に呪縛を解かれて動き出す。

 瞬間移動したとしか思えない速さでドロシーに迫ったノエル様は容赦なく彼女を蹴倒し、その首筋に刃を突きつけた。

「これだけのことをしてくれたんだ。覚悟はできてるんだろうな」

 普段とは違う口調で告げるノエル様の声は、視線は、凍えるほどに冷たい。

 次に魔法を使うそぶりを見せれば殺す。それは噴き出すほどの怒気が雄弁に語っていた。

「あーもうごめんってばぁ!! どーせ死なないから刺してもいいけどさぁ!! 報復とかお説教は後にして、いまはあっち、あの子をどうにかして!! このままじゃ本当に死んじゃうって!! セラ、止めてお願い!!」

 頼まれるまでもなく、私は地面を蹴って駆け出した。