妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「《《これ》》を手に入れたあたしに勝てる魔女なんているわけがない。あたしの攻撃を咄嗟に防ぐほどの魔女だもの、力量の差はあなた自身がよーくわかってるわよね? それでもあたしに挑んでみる? いいわよ、心が折れるまで付き合ってあげる。ちょうど退屈してたのよ。あたしと一緒に遊びましょう?」

 くすくす。私の耳元で魔女が笑う。

「ねえ、知ってる? セラ。あなたはあなたの意思で増幅対象を選ぶことはできない。つまりね、あなたの魔法はあなたの意思がなくても、あなたが生きてるだけで発動するの。必要なのはあなたの肉体であって、あなたの自我は要らない。というわけで、セラは精神的に死んでもらって、あたしが有効活用してあげるわね? これからは生きた人形としてあたしの傍にいてちょうだい」

 この世の何よりも恐ろしい魔女の手が私の頭に触れる。

 ひやりとしたものが背筋を這い上ったそのとき、リュオンが謎かけのような言葉を口にした。

「――ドロシー・ユーグレース。お前は世界で一番綺麗なものを見たことがあるか」

「は?」
 ドロシーが怪訝そうな声を上げる。

「世界で一番綺麗なもの? 何それ? 大きなダイヤモンド? 青い空? 海の珊瑚? 一面に咲いた花? それとも夕焼け? 空に輝く月?」

「違う。月より星より綺麗なものだ。おれはそれを知ってる。セラが教えてくれた」

 リュオンはふと空を見上げてから、空に似た青い双眸を私に向けた。

 彼は酷く透明な笑みを浮かべて言った。一言。ただ一言だけ。