妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 えっ――
 目に映るものが信じられなかった。

 魔法を使うには集中力がいる。

 どんな魔女であっても一度に使える魔法は一つだけのはずなのに、ドロシーの頭上には同時に三つの異なる魔法陣が出現し、間髪入れずに視界が真っ白に染まった。

 急に全身から力が抜けて、私がその場に座り込んでしまうよりも早く。

 ――バシンッ!!

 例えるなら平手打ちでもしたかのような音が炸裂し、私の手を掴んでいたリュオンの手の感覚が消失した。

「――!?」
 リュオン!?
 叫びたかったけれど、言葉は声にならなかった。

「――捕まえた」

 泥濘の底から響くような、ねっとりとした少女の声が耳元で聞こえる。

 強烈な光によって奪われた視界が戻らず、何が何だかわからないうちに首に痛みが走った。

 どうやらドロシーが後ろに回り込み、私の首筋を抉るように強く指を押し当てている、らしい。

 振り向いて確かめることはできなかった。
 身体が動かせない。

 草原に座り込んだ姿勢のまま、私の身体は石像のように固まっていた。