妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「……自分の意思で誘いに乗っておいて被害者面するなら虫にでも変えてやろうと思ってたけど。あなたは一度もそんな素振りを見せなかったわね。いいわ、合格。望み通り魔法を解いてあげる」
 ドロシーは小さな右手を伸ばしてユリウス様の頭に触れた。

 ユリウス様の全身が淡く白い光に包まれる。

 ドロシーが優しくユリウス様の頭を撫でると、白い光には亀裂が入り、壊れ、ボロボロと崩れ落ちていった。

 零れ落ちた白い光の破片はきらめく粉となり、地面に触れる前に消えた。

「はい終わり。これでもう猫にはならないわ」
 数秒してドロシーは手を離した。

「……ありがとう」
 ユリウス様は自分の右手を見つめた。
 胸にこみ上げるものがあるらしく、ぐっと右手を握って目を閉じる。

「良かったね、兄さん」
 ノエル様がユリウス様の肩を叩いて笑った。
 兄弟は笑い合い、私の隣でリュオンも安堵の表情を浮かべている。

 ――ああ、良かった。
 私は穏やかな気持ちで微笑み、リュオンと手を繋いだままドロシーに近づいた。

「お願いを聞いてくれてありがとう、ドロシーさん。やっぱりあなたはいい人だったのね――」

「それはどうかなあ?」

 ドロシーの口の両端がつり上がり、彼女の頭上に魔法陣が浮かんだ。