妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 授業が終わるまで、二人並んで演習場のベンチに座って風に吹かれた。
 長い長い沈黙の後で、彼女はぽつりと呟いた。

 ――あなたも大変ね。

 敵だらけの魔法学校の中で、ココはただ一人、消極的な味方でいてくれた。
 表立って私を庇うことはなかったけれど――何せイノーラの大親友がココが暮らす村の領主の娘だったのだ。私に肩入れして反抗すれば家族が酷い目に遭う――私が挫けそうなときは陰でそっと励ましてくれた。

 それがどれほど救いになったか、多分ココは知らないだろう。

「それにしても、さっきは思わず笑っちゃった。セラっておとなしそうな顔して、人前で堂々とイチャつくような人だったのね。全く予想外だったわ」
「ち、違うの、あれはイチャついてたわけじゃないの!!」
 私は赤面して両手を振った。

「じゃああれは何なの?」
「…………」
 改めて問われると困る。

「ふふ。学校ではいつも暗い顔をしていたセラがいま幸せそうで良かったわ。多分もう二度と会うことはないと思うけれど、元気で」

 ココは手を差し出した。

 私が魔女と手を繋ぐ危険性を知っていながら、リュオンもノエル様も何も言わない。私の意思に任せてくれている。

 ほんの少しためらいはあったものの、手を握り返すと、ココはすぐに自分の魔力量の大幅な上昇を認識したらしい。翡翠色の目が丸くなった。