妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 ――イノーラとクロード王子は正直雑魚だし、その気になればいつでも捕まえられるわ。あいつらは後回しで良いとして、問題はセレスティアよ。何であの子、よりにもよってエンドリーネ伯爵邸に身を寄せているの? 情報屋の情報が確かなら、エンドリーネ伯爵は《双刃のバートラム》、伯爵夫人は《血染めのスザンヌ》と呼ばれた国内でも指折りの武人だっていうじゃない。さらに大魔導師リュオンと国軍の近衛隊長ノエルが四六時中あの子を守ってるってどういうことなの? どうやって私たち三人だけであの要塞を攻め落とせって言うのよ。完全武装した一個師団でも無理よ。もうやだおうち帰りたい。そもそも私はあの子を捕まえたくないってのに。

 テーブルに突っ伏して嘆く魔女の言葉を聞いて、仲間に引き込めると確信したリュオンは彼女たちに話しかけた。

 リュオンが差し出した国王直筆の信書を見て、私を捕まえる理由を失った魔女たちは大喜びした。

 魔女と共にいた二人の騎士の名前はエミリオとブラッド。
 そして、魔女の名前はココ。
 レアノールの魔法学校を飛び級で卒業した、私の知るココその人だった。

「降りるぞ」
 リュオンの宣言で私は回想を打ち切り、石畳の路地にふわりと着地した。
 十数メートルの距離を降下したとはとても思えないほどの優しい衝撃が足の裏に走る。

 そこはラスファルの街の大通りから少し外れた路地だった。
 閉鎖された工場の高い壁に日差しを遮られた薄暗い路地には私たち以外に誰もいない。

 騒ぎにならないよう降下先には人気のない場所を選んだのだろう。
 降り立ってすぐにリュオンは大した動作もなく魔法を使った。

 リュオンの目の前に出現したのはこの街の地図だ。
 地図の上には赤い点が表示されている。