妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 屋敷の外に出た後、右手でノエル様の手を、左手で私の手を掴み、リュオンは風の魔法を使って空を飛んだ。

 目に映るラスファルの街の景色はあっという間に視界の後方へ流れていく。

 リュオンを中心として球状に展開された光の障壁が守ってくれているため、風圧で吹き飛ばされることはない。

 リュオンはこれまで何度か戯れに私を抱えて空の旅に連れて行ってくれた。
 だから空を飛ぶことには慣れてはいるし、万が一落ちてもリュオンが助けてくれるのはわかっている。

 でも、やっぱり怖いものは怖い。

 この高さから落ちたら間違いなく即死だ。
 なるべく足元を見ないようにしながら空を飛ぶこと約五分。

 その間、私は出発前に聞いた話を思い出していた。

 昨日の夜、リュオンが外出した理由は強い魔力を持つ魔女が仲間らしき二人の男性と街に入ってきたことを魔法で察知したからだった。

 普段なら魔女が入って来ても気にはしないのだが、イノーラの襲撃に備えて厳戒態勢だったリュオンは魔女が何者かを確かめることにした。

 魔女たち三人が向かったのは街で人気の『蝶々亭』。

 素知らぬ顔でリュオンは近くの席に座り、ミドナ語で喋る魔女たちの会話を盗み聞きした。