妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「その本は何? もしかしてバートラム様が秘密裏に入手したという発禁本?」
「そう。禁止魔法が書かれた古文書」
「凄い、こんな古い本初めて見たわ。いつの時代に作られた本なのかしら」
 伸ばした私の指先が本に触れるよりも早く、リュオンは古文書を取り上げた。

「読まないほうがいい。頭が痛くなるような禁止魔法ばかり書いてるから」
「……さっき練習していたのは、禁止魔法なの? 最後にリュオンが構成しようとしていたのは知らない魔法陣だったわ。火や水や光を生み出すわけでもない……恐らく身体に作用する魔法よね? どんな魔法なの?」

「あの一瞬でそれだけわかれば大したものだよ。でも、内緒。そんなことよりセラ、十日後に流星群が見られるんだって。一緒に見ない?」
「いいわね。皆で――」

「いや、二人で見たいんだけど」

 台詞を遮られ、私は笑顔のまま固まった。
 私を見つめるリュオンの青い瞳の中で金色の《魔力環》が淡く光っている。

「……夜に出かけるの? 二人きりで?」
 それはまるで、いやどう考えてもデートではないか?

「流星群を見るなら夜だろ。――嫌ならいいよ。困らせて悪かった」
 少し待っても私が了承しなかったことで失望したのか、リュオンは本を持って立った。

 地面に続く三段の階段を下りて東屋を出て行く。振り返りもしない背中。

 見放されたような気がして、急に怖くなった。