妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「ええ、自分を守ってくれない婚約者よりも、断然ユーリ様のほうがいいわ。これからお二人はどうなるのかしら」

 ユリウス様に相談されたバートラム様は逆に問い返した。
 お前はどうしたい。

 ユリウス様は考え込んだ後で言った。

 いまはとても恋愛などできる心境ではない。
 また裏切られたらと思うと身が竦む。

 でも、ラザフォード嬢が会いに来てくれたのは純粋に嬉しかった。
 恋人にはなれなくても友人にはなりたい。

 バートラム様は「ならば難しいことは考えず、素直に友人になればいい。月に一度会って茶を飲む程度の浅い付き合いならばお前も猫にならずに済むだろう。至急ラザフォード侯爵に連絡を取る」と答えた。

「エマ様とは少ししかお話できなかったけれど、彼女が本当にユーリ様を愛しておられるのはすぐにわかった」

 想い人を前にしての緊張が、上気した頬が、熱心に見つめる眼差しが。
 いま私は全身全霊でユリウス様に恋をしていると訴えていた。

「個人的にはエマ様の恋を応援したいわ。いまは無理でも、将来的には恋人になって、ユーリ様を支えて差し上げて欲しい。そう願ってる」

「……そうだな。おれもユーリには幸せになってほしい」

 沈黙が落ちたので、私はテーブルの上の本に目を留めた。

 とても古そうな本だった。
 元は白かったのであろう表紙はすっかり黄ばみ、あちこちボロボロだ。