妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 注視しようとした刹那、彼は描きかけた魔法陣を消して目を開けた。

 ばちっと目が合う。

「いつの間に。声をかけてくれたら良かったのに」
 リュオンの驚き顔はすぐに笑顔へと変わった。

 彼は私を見ると優しく笑う。
 私はその顔が好きだ。言葉にせずとも歓迎されているのがわかり、嬉しくなる。

「もう夜も遅いのに、どうしたんだ? 眠れないのか?」
「ええ、今日は色々あったから、脳が興奮しているみたいで。もっとも、当事者は私ではなくユリウス様なのだけれど」
 私は彼の向かいの椅子を引いて腰掛けた。

 公園のベンチに並んで座り、三十分ほど話していたユリウス様はエマ様と別れた後、両親に相談を持ち掛けた。

 どうやらラザフォード嬢に好意を持たれているみたいだがどうしよう、と。

「お話を聞く限り、夜会でのユーリ様の行動はまさしく女性が理想とする騎士様そのものだったものね。たとえ婚約者がいたとしても、エマ様が恋に落ちてしまったのもわかるわ。私がエマ様の立場でもユーリ様に恋をしていたもの。絶体絶命の危機に颯爽と現れたユーリ様――格好良すぎるでしょう!」
 堪らず、私はテーブルに突っ伏して身悶えた。

 一方で、リュオンが何やら複雑な表情をしていることには気づかなかった。