妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 エマ様はユリウス様を心配したが、ピートは良い気味だとユリウス様を嘲笑した。

 女子供に優しく眉目秀麗なユリウス様は若い貴族女性たちの憧れの的だった。
 夜会でエマ様を救ったことでさらに評価を上げたユリウス様がピートには気に入らなかったらしい。

 その瞬間、元より枯渇しかかっていたピートに対する愛情は完全にマイナスになった。

 ピートの容姿、声、性格、仕草、癖――全てに生理的嫌悪を催し、最終的には彼の傍にいるだけで吐き気が止まらなくなったエマ様は堪らず両親に婚約破棄を訴えた。

 当然最初は突っぱねられたが、エマ様は覚悟を示すためにナイフを手に取り、己の長い髪を切り落とした。

 娘の本気を思い知った侯爵夫妻は泡を食って娘を宥め、エマ様が病気にかかったことにして婚約破棄の手続きを行った。

 病気療養という名目で侯爵邸を離れ、ここしばらく別荘で暮らしていたエマ様は結婚式直後から家に引きこもってしまったユリウス様のことをずっと気にしていた。

 しかし最近、ユリウス様が家を出て散歩するようになった。

 その噂を聞きつけたエマ様は居ても立っても居られず、侍女のベネットに頼み込んでこっそり別荘を抜け出し、ラスファルを訪れたのだという。